日本の歴史に名を刻む偉人たちはイメージ通りの人物だったのかを紐解き、素顔をまとめていく、偉人・履歴書。今回は新選組の鬼の副長と呼ばれる土方歳三の素顔に迫っていきます。人生を振り返りながら、現代のビジネスや組織マネジメントにも通じる人生哲学を学んでいきましょう。
土方歳三の人生を振り返る
幕末の1835年に、現在の東京の日野市にあたる場所で、農家の末っ子として生まれました。やがて、剣術にのめり込むようになり、剣術道場で近藤勇などと出会います。そんな折、尊王攘夷運動が巻き起こり、日本は混乱の時代に入っていきました。
土方歳三は、29歳の時に京都の治安維持活動に参加し、その際のメンバーとともに新選組を起ち上げました。組長は信頼を寄せる近藤勇、2番手として土方歳三は副長になります。
新鮮組の名を知らしめたのが池田谷事件です。その後、人数も増え、尊王攘夷派を震え上がらせるような強力な集団となっていきました。その後、戊辰戦争が起こり、新政府軍の最新兵器に歯が立たず、鳥羽伏見の戦いで敗れることになります。近藤勇が処刑された後、土方歳三は函館戦争で命を落としました。土方歳三は最後の武士と呼ばれています。
武士になりたかった土方歳三
土方歳三が滅びゆく幕府を支え、武士になる夢を追い続けたのはなぜだったのか探っていきましょう。幼い頃はやんちゃで活発な子どもだった土方歳三ですが、豪農とはいえ農家の末っ子であり、厳しい身分制度のもと、武士になりたくてもなることができない時代です。厳しい奉公に耐えることや打ち身や捻挫に効くとされる石田散薬を全国各地の道場に売り歩きながら、人を見る目を養い、剣術を学んでいきました。
天然理心流の道場で、近藤勇や沖田総司、井上源三郎と出会い、新鮮組の礎が築かれていきます。入門3年でかなりの腕を認められながらも免許皆伝には至らなかったのは、武士への夢を叶える千載一遇のチャンスを得たからでした。京都の治安を維持する将軍直属の浪士組の一員として、29歳にして武士となった土方歳三は幕府を支えるべく活躍していきます。素顔の履歴書は、あだ名は鬼の副長、ラストサムライ、性格はやんちゃで冷徹、プレイボーイ、特技は剣術や武術、趣味は和歌、生涯の友は近藤勇、将来の夢は武士になることと書き加えられます。
寄せ集め集団のマネジメント術
新鮮組の副長となった土方歳三ですが、寄せ集め集団をどのように統率していったのでしょうか。新鮮組の目的は京都の治安維持でした。尊王攘夷派は、京都に火を放って人々が混乱する間に、京都守護職である松平容保を殺害するとともに、孝明天皇を連れ去るというテロ計画を立てていました。この計画を事前に察知して阻止し、尊王攘夷派をやり込めたのが新選組であり、1864年の池田谷事件です。
池田谷事件をきっかけに、京都が焼け野原になるのを阻止し、幕府を守ってくれたとして、京都の人や幕府から信頼を勝ち得ていきました。新鮮組は、武士が切腹する際に着用するのと同じあさぎ色のユニフォームを着て、決死の覚悟であることを示しました。とはいえ、寄せ集め集団の統率を図るために局中法度と呼ばれる掟を作り、背いた場合には切腹や暗殺が行われたのです。その数は50人以上にも及びます。人を切る経験を切腹の介錯で行わせる修行まで行われていたのです。
常に死と隣り合わせであり、死ぬ覚悟で当番を担う死番という制度も設けられていました。一方で、幕医からアドバイスをもらい、200人に及ぶ隊士たちの健康にも気を配っていました。滋養をつけるために、当時としては珍しい豚肉料理も食べさせたと言います。
盟友の処刑と仲間への想い
戊辰戦争で新政府軍に囲まれて切腹を迫られる近藤勇に対して、土方歳三は別人になりすまして逃げることを助言します。武士としての潔さよりも、近藤勇に生きていてほしいというのが土方歳三の本音でした。ですが、結果的には逆賊として処刑され、京都の三条河原に首がさらされてしまいます。切腹をさせたほうが武士としての誇りを保てたと、土方歳三は後悔したのではと言われています。その後も、仲間の尊厳を守りたいという思いで、一人になっても戦い続けようとしていました。誰よりも武士であることを貫いたのが土方歳三の人生です。
偉人・素顔の履歴書 第6回「新撰組 鬼の副長・土方歳三 編」まとめ
新政府軍との戊辰戦争で最初から最後まで戦い続けていた土方歳三は、敗北するのがわかっていながら、武士としての死に場所を探していたというのが加来耕三先生の見立てです。彼の素顔の履歴書から何が学べるのか、詳しくは番組をご覧ください。
