日本の歴史に名を刻む偉人たちは、果たして我々がイメージする通りの人物だったのかを紐解いていく偉人・素顔の履歴書シリーズ。第7回は加賀百万石の祖・前田利家です。律義者、真面目というイメージがありますが、なぜ大出世できたのかを見ていきましょう。
利家の人生
前田利家は、織田信長や豊臣秀吉と同じ時代を生きた人物です。加賀前田家に生まれましたが、4男であったので家督相続の可能性はないと自由奔放に育ちました。槍の名手として19歳で織田信長に仕えますが、当時は短気で喧嘩早いところがあり、トラブルを起こして織田信長から出仕停止を命じられます。
その後、兄から家督を受け継ぎ、32歳の時に前田家の当主となりました。北陸方面軍で活躍し、念願の国持ち大名になりました。本能寺の変で織田信長が殺害されると、羽柴秀吉と柴田勝家による賤ヶ岳の戦いが勃発、利家は柴田勢につきましたが、秀吉に敗れます。その後は、秀吉に仕え、天下統一を支えました。
若い時はやんちゃだった利家
前田家は織田家に仕える家系でした。四男ゆえに家督は継がないと自由奔放に育った利家は、織田信長に仕えるものの短気な性格で仲間とトラブルを起こし、お役御免を言い渡されます。その後、社会的に復帰できるまでの2年間にかなり修行を積み、人間性も磨かれたというのが見立てです。
利家におけるかぶき者の影響
当時180cmの高身長があり、目立つ存在でしたが、世間の常識から敢えて逸脱したいと、奇抜な装いをするかぶき者にハマったと言われています。かぶき者にハマった人たちは、今でいうアウトローで、街中で見かけたら近づきたくない存在です。利家もその1人で、常にカラフルな槍を持って現れ、誰かれかまわず喧嘩をふっかけるので、槍の又左と恐れられていました。このアウトローぶりを信長の前でも発揮してしまい、織田家への出入りが禁止されてしまったのです。牢人となった2年間の間に、利家の性格が変わったと言われています。
利家のセンスと加賀の文化
きらびやかなものが好きだった利家のもとで、花開いたのが、現在にも伝わる加賀の金箔文化やお国染め、そして加賀友禅です。金箔は繊細な表現が求められるもの、お国染めは墨一色ではありますが、普段使いの着物にこの個性的な模様を入れたのがおしゃれです。
華やかで品もある加賀友禅など、今でも石川県に伝わる芸術や伝統工芸は加賀百万石の祖である利家から始まったものと言えるかもしれません。
孤独を抱えているトップの信長や秀吉にとって、利家は近くにいると楽しい、愛される人物でした。 履歴書には利家のモットーとして、「身の程を知って生きよう。」が加わりました。トップ陣に愛されながら、身の丈を知ってしたたかに生きたことが、出世につながったことと言えるかもしれません。
利家がとった不可解な行動
利家のその後の運命を決めた戦いが賤ヶ岳の戦いです。1ヶ月ほどのにらみ合いが続いた後、一気に佐久間盛政軍が奇襲を起こしました。利家は佐久間軍の援護射撃をしていましたが、秀吉が美濃の大返しと呼ばれる52kmを、わずか5時間で突撃する行動に出たため、佐久間軍は打撃を受けます。
この時、利家はさっさと撤退を決めます。これは、秀吉側への寝返りなのか、負けを認めての撤退だったのか、判断が分かれるところです。そんな利家の行動を見た柴田勝家はそれを許し、秀吉のもとにいくよう諭したと言われています。
降伏を求める秀吉に対して、間に入ったのが利家の妻のまつです。もともと、家族ぐるみの付き合いであり、まつを呼んで話をした秀吉は、秀吉を勝たせるための行動であったとして利家を許したのでした。
秀吉のうまいところは、相手を立ててイメージ作りをすることです。そのおかげで利家は、秀吉の勝利に貢献した律義者として家臣たちに慕われ、加賀百万石を築くことになるのです。利家は、板挟みや能力の高い人は苦手でしたが、まつという人生最大の宝物を得て、周りの人々に恵まれていたことが出世につながりました。
戦国財テク術
利家は妻まつに怒られるほど、ケチケチぶりが目立ったと言われています。米や舟運を使ったビジネスや金融などを行っていたことが、後に受け継がれ、加賀百万石が築かれていったのでした。感情論だけで生きていた利家が、自分を見つめ直し、180度転換したのが成功の秘訣です。前田利家のトリセツについては番組をご覧ください。
「加賀百万石の祖・前田利家 編」まとめ
前田利家は、律儀で真面目なイメージとは異なり、若い頃は実はやんちゃで、織田信長から出禁を食らったこともあります。ですが、妻に恵まれ、周りの人に恵まれたこと、身の程を知って生きたことが加賀百万石の礎を築く出世につながりました。
