千利休・天下一となった茶人の運命とは

千利休・天下一となった茶人の運命とは 歴史

歴史上の偉人たちが残した敗北から、私たちは何を学べるでしょうか。今回は、天下一となった茶人、 千利休の敗北に着目していきます。千利休というと、一般的には寡黙な人格者のイメージが強いですが、利休が世に出てきたのは60歳を過ぎてからの頃で、個性を殺すこともできる年齢です。この年齢で影響を高めていった利休は捉えどころのない人物とも言えるでしょう。いろいろと想像をかきたてられる人物でもあります。

千利休とはどんな人物なのか

 謎多き千利休とはどんな人物だったのでしょうか。現代に伝わる茶道の源流である、茶の湯を確立したのが千利休です。1522年、現在の大阪の堺市に生まれました。生家は魚問屋であったと言われています。堺は当時、日本有数の貿易港として栄え、豪商が割拠していました。堺の商人の間で流行していた嗜みが茶の湯でした。利休は17歳で、豪商の一人であった武野紹鴎に師事し、茶の湯を始めたと言われています。商人であり、茶人として堺で活躍していた利休が、日本の歴史に名だたる人物として入り込んでいったのは48歳を超えた頃からです。

利休の栄光と敗北
1573年茶会を取り仕切る茶堂(茶頭)の1人となる

 なぜ政治の世界へと入り込んでいったのでしょうか。織田信長は経済の中心地であった堺に目をつけ、直轄地にすると、茶の湯を政治に利用しようと考えました。利休が52歳の時、茶の湯を取り仕切る3人のうちの一人として、織田信長に召し抱えられました。そして、信長亡き後はその後継者である豊臣秀吉に仕えます。秀吉は、信長以上に茶の湯を政治の道具とし、利休の力を借りながら天下統一を目指して邁進します。やがて、関白として昇りつめた秀吉は、史上初となる禁中茶会を開催しました。その行事を取り仕切る役を命じられたのが利休だったのです。ですが、利休が70歳の時、秀吉から蟄居を命じられ、最期は切腹に至ります。なぜ、切腹に至ったのか、敗北の歴史を紐解いていきましょう。

わびの世界に共鳴し合う秀吉と利休

利休のアイデアを最大に評価したのが秀吉

 信長の茶と秀吉の茶には大きな違いがありました。それが、わびです。将来を見失うような人をわびと称していました。秀吉は貧しい農家出身で典型的なわびの人でした。そこで、利休のわびの世界と共鳴し合うことができ、2人の絆は深まっていったと推測されています。利休は冷凍寂枯をわびとする世界を重んじ、創意工夫を加えることで、わび茶の世界を切り開いていきます。秀吉は利休のわび茶に心酔し、利休の門人となりました。茶席では、有力武将たちに利休が認めた茶器を自慢して、自分の権勢をアピールしたと言われています。一方、利休は秀吉の心を癒す存在であったとも考えられています。利休は茶の湯をどう考えていたのかといえば、一期一会です。一回一回の茶の湯を大切にして、心を尽くしていました。

秀吉の茶の湯政治利用
利休と話すと何か心がホッとするような存在感はあったのではないか

 利休は、大臣としての政治的な権限などもないままに、諸大名の私的な用件を秀吉に取り次ぐ役割まで果たすようになります。大臣のほうが格は上ですが、それらが秀吉に物を申したい時の棲み分けをする役割を担っていたのです。秀吉が関白になると、ピラミッド組織が形成されていきました。序列が明確になったため、茶会の席で権力を競い合う必要がなくなります。四国、九州を平定し、天下統一の総仕上げとして小田原へと出陣すると、利休も同行しました。利休が竹で素朴な花入れを作ったところ、秀吉が機嫌を損ねて、その花入れを投げつけたという逸話が残されています。利休は良いアイデアマンであり、そのアイデアを利用していたのが秀吉です。天下人にのし上がっていくにつれ、秀吉の心も変わっていき、利休の居場所がなくなっていきます。秀吉に仕えて8年、古希を迎えようとしていた時期です。

利休の敗北まとめ

 千利休は堺の商家に生まれながら、織田信長、豊臣秀吉という天下人に仕え、わび茶を大成させ、天下一の茶匠と謳われるまでの地位と名声を勝ち得た人物です。茶の湯を通じて政治的な影響力を持つまでに昇りつめましたが、可愛がってくれていた秀吉に突如、蟄居を命じられ、最期は切腹に至ります。

利休の敗北から学ぶ教訓
一、相手の内懐に踏み込みすぎない
一、自らの力を過信すべからず
一、表舞台から降りるタイミングを知るべし

 自ら切腹を選び、自分の死を秀吉に高く売りつけることに成功したと言えます。そのため、敗北者と言いにくいところがありますが、千利休の敗北から学べることは次の3つです。相手の内懐に入り込みすぎない、自らの力を過信しすぎない、引き際を考えることです。

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