春はそこまで来ていても、まだまだ温かいものが食べたくなる季節です。今回の京都画報は妙心寺からのスタートです。常盤貴子さんも大好きな京豆腐の湯豆腐をはじめ、豆腐料理に迫っていきます。豆腐料理を習うなど、京のお豆腐に込められた人情ストーリーを紐解いていきます。
総本家 ゆどうふ 奥丹清水へ
江戸時代から300年以上にわたって続く総本家「ゆどうふ 奥丹清水」で、16代目当主のおもてなしを受けます。江戸時代初期から南禅寺の近くで営んでいた老舗で、湯豆腐と豆腐のお料理のセットをいただきます。
柔らかく優しいお味で、大豆の風味がたまりません。お出汁もおいしいと常盤貴子さんも絶賛しました。「奥丹清水」がこだわりにこだわって作っているもう1つのお豆腐が「むかし豆腐」です。むかし豆腐は木綿豆腐で、先ほどの豆腐より、香りが良く、歯ごたえがしっかりしていると常盤貴子さんも気に入ったようです。
昔のお豆腐、本来の豆腐は縄で縛って持ち歩けるほど硬かったと言います。昔ながらの製法をもとにした、むかし豆腐を生み出したのは先代です。地下に専用の工房を作るほどの力の入れようです。むかし豆腐はすべて手作りで行われており、機械は一切用いません。農家さんに育ててもらった滋賀県産のふくゆたかを用い、水は豆腐の味を引き出す飛騨山系の軟水を使っています。
一晩、水に浸した大豆を石臼で挽いていきます。石臼を使うことで、豆の味が失われず、豆の味がしっかり感じられる豆腐に仕上がるのです。石臼から出た豆乳を3人がかりで搾り、にがりを加えて固めていきます。にがりも藁を用いて昔ながらの方法で抽出するというこだわりようです。天然のにがりを加えることで、豆腐が固まり始めるので、どのくらい入れるかを職人の長年の経験で見極めていきます。
手間をかけて手作りされた、しっかりとした硬さのむかし豆腐ができあがりました。こだわりの豆腐を創り出した先代のエピソードを聞き、本当の豆腐を学ばせていただいたと、常盤貴子さんがお礼を伝えていました。
地域の中のお豆腐屋さん
良質な水に恵まれた京都には、かつては町内に1軒はお豆腐屋さんがあったと言います。スーパーマーケットで豆腐が売られるようになり、次第に消えていきましたが、残される老舗の1つ、文政年間から100年以上続く「入山とうふ店」を訪れました。8代目の当主の仕事ぶりを拝見します。薪を使い、おくどさんと呼ばれる釜で作るのが入山とうふ店の伝統の製法です。
豆腐作りの決め手は火加減が勝負であり、その日の気温や豆の状態などを見ながら調整していきます。できたての豆腐が並ぶと、開店と同時に常連のお客さんがやってきます。中には、職場でのお昼は毎日何もつけない作り立ての豆腐と豆乳という方もいらっしゃいました。入山とうふ店で冬限定の商品が炭火で焼く焼き豆腐です。今では、ほかではほぼ見られなくなった製法です。ゆず味噌をつけていただくと、焼き豆腐の香ばしさがいっそう引き立ちます。
東林院で精進料理を学ぶ
修行中に料理に目覚め、お寺に厨房を設け、精進料理教室も開催している住職から豆腐料理を教わります。辰年の龍にちなみ、飛龍頭を作ることになりました。素材にはそれぞれ龍の目玉などを意味するものを揃えます。かつては、お豆腐屋さんで潰れてしまい、売れなくて困っている豆腐を禅寺が譲り受け、よくすりつぶして作ったのが始まりとも言われています。龍の頭をイメージしながら種を作り、油でカリっと揚げたら、よく冷ましてから煮込んで完成です。自分で作った龍の目を楽しみながら、滋味深いお味を堪能しました。
「京都の定番!豆腐の名店 -町のとうふ店から名刹の精進まで-」まとめ
今回の京都画報では、京豆腐のこだわりの世界を楽しんできました。湯豆腐だけでない、昔ながらの製法で作り出す豆腐の魅力を楽しめる回です。ほかにも、関東と関西のお揚げの違いや豆腐の概念が変わる滑らかな豆腐、豆腐スイーツなども登場します。ここではご紹介しきれない、バリスタ日本チャンピオンが経営するカフェにも常盤貴子さんが訪れていますので、ぜひご覧ください。